2009年8月8日土曜日
夜間入浴 全国老健施設2009年新潟大会 発表その2
マッピングの発表に続く二題目です。
若手の介護福祉士・田淵紳也が、朝礼で再演したものを収録しています。
服を脱いで全裸になるという「問題行動」のある男性利用者に対し て、普通の生活と同じ夜間の入浴を試みた実践報告。新潟での発表のときは、反響が大きく、質問が次々出ました。
夜間入浴はすでに先進的な施設では「業務」として定着しているところもあるようですが、私どもの施設ではひとりの利用者の問題解決から始まりました。組織としての定着はま だまだですが、新しい試みに手を上げた職員をチームで支える職場の雰囲気が、介護の質の向上に寄与しているようです。 大熊
2009年8月2日日曜日
活かせ通所リハビリ!なくせ訓練偏重! 全国老健大会2008年京都 発表
~目標指向型ケアマネジメントで生活に良循環を!~
近藤明良・田淵紳也
3年後には介護療養型の廃止が決まっており、老健の存続にかけても危機感を持たなければならない時代となりました。背景には、役割に対し「期待した効果が得られなかった」事も一因とされています。療養型の二の舞を演じないためには、老健の理念と、役割を理解し、十分に発揮していく必要があります。
当施設では、家庭は生活の拠点であり、老健は第二の生活の場である。地域との関わり合いの中で往ったり来たりの利用を繰り返し、住み慣れた地域・家庭で老いを生きることを支援していく、と言う理念のもと通所リハビリを中軸に入所・短期入所・居宅介護・包括支援センターとともに「入所と在宅の壁を作らない」サービスを展開しております。
私共はこれを「バザール・ケア」と呼んでおりますが、施設自体が地域社会の縮図のようになっており、大規模多様な関係性の中で利用者の自己決定で一日を過ごすことにより “関係と生活” を見直すきっかけをつかめるよう支援するという「生活リハビリ」の場となっております。
もちろん、療法士からの個別訓練・評価などが受けられる事も重要な役割の一つとなりますが、個別訓練を受けることのみがリハビリであると思い込まれている家族・利用者も多いようです。また、私を始め通所リハビリを十分に理解できていないケアマネが、十分な説明による理解も得られないままに、家族からの要望だけで、安易に通所リハビリが導入されてしまうというケースも少なくないようです。このため、中心に考えなければならないはずの「利用者自身」がカヤの外になってしまい、目標も持てないままに利用開始となり不満を抱かれるという悪循環が起きています。
81歳女性の西さんもその一人です。西さんは脳出血後遺症による右片麻痺が残り要介護3の認定を受けました。退院後すぐに週3回の通リハ・1回のデイサービスを開始されています。サービスの効果があったようで、3ヵ月後の更新認定では要支援となられました。
通リハの担当療法士からは現在の機能を低下させないためには、通リハの利用を中断すべきではないとの意見がありました。しかし、デイサービス事業所との関係もあったため、家族より通リハの利用終了を希望されました。通リハの利用がなくなり半年が経過した次の更新時には歩行の持久性が低下し実用歩行でのレベル低下あり、要介護1の認定となりました。このため居宅を再契約されるとともに通リハを再開し、家人希望にて短期集中リハを利用されることとなりました。
西さんはもともと、障害を負われたことに気落ちされており、生活に対する意欲低下が見られていましたが、退院後、療法士からの訓練も継続して行なわれていたことに伴い、広いバザールの施設内を過ごすことでも適度な活動量が得られていたようです。また、顔なじみの利用者もおり、気の合う利用者と一緒に行う手芸活動などを通じて、心身ともに活発な日常生活を得る事ができていたようです。
しかし、認定更新による制度上の制限から、本人の意向が反映されないまま、デイサービスのみの利用となり活動量が減少したとともに、なじみの利用者・職員との関係も打ち切られてしまいました。
その結果半年後の更新認定では、心身機能の低下あり要介護1の認定を受けました。通リハを再開され、短期集中リハビリも利用されることとなりましたが、利用中断していた間の環境変化が「障害を負った自分」のイメージを更に悪化させていたようで、リハビリ中涙を流されることも見られるようになりました。
短期集中加算も「積極的なリハビリにより身体機能を向上させてほしい。」との家族・ケアマネなどからの要望であり、本人の意向は反映されていませんでした。
半年後の担当者会議では、「現在、持久力的にはやや改善しているが、依存的になられている。利用中は仲の良い利用者とコミュニケーションを楽しんだり、手芸活動も継続されているが抑うつ的な面も見られるため機能訓練は無理強いせず、本人の意向を尊重し、楽しみを増やせるよう支援する。」ということになり、短期集中リハビリも中止されました。
その後、西さんは環境を変えることなく週3回の通リハ・1回のデイサービスにて休むことなく順調に利用できており、まずまず満足の行く生活が送れているようです。
考察としまして、退院後の通リハ利用により一度は心身機能が向上しましたが、認定更新の際、西さんの意向が把握できておらず、家族の意向のみを尊重してしまい、西さんの意図しない環境変化を招いた結果、「障害を負った自分」のイメージを悪化させ生活の悪循環を招いてしまっていたようです。
今後このような失敗を防止し、通リハが生活に活かされるためには、検討段階でケアマネからも十分な説明にて理解が得られるよう知識を深めておく事も必要となりますが、まず、利用者とのコミュニケーションを図る中で、相互信頼関係を構築していくことが重要となります。
そこでケアマネが把握した「望む暮らし」を担当者会議などの場で専門的見地から意見を出し合うことによりニーズを導き出し、共通の目標に向かうための方法を明確にしていく。これを基に段階的な支援を繰り返すことによって一つ一つ達成感が得られ、目標である「望む生活」に向けてモチベーションを高めていくという「目標指向型」のプロセスを取り入れることで、訓練ばかりに囚われることなく、「何のために支援を受けるのか?」という目標を明確にできることを西さんのケースで気づかせてもらいました。
このプロセスの活用により、家族にも納得がいく説明の上で利用者の望む生活を支援していけるよう努力していきたいと思っております。
近藤明良・田淵紳也
3年後には介護療養型の廃止が決まっており、老健の存続にかけても危機感を持たなければならない時代となりました。背景には、役割に対し「期待した効果が得られなかった」事も一因とされています。療養型の二の舞を演じないためには、老健の理念と、役割を理解し、十分に発揮していく必要があります。
当施設では、家庭は生活の拠点であり、老健は第二の生活の場である。地域との関わり合いの中で往ったり来たりの利用を繰り返し、住み慣れた地域・家庭で老いを生きることを支援していく、と言う理念のもと通所リハビリを中軸に入所・短期入所・居宅介護・包括支援センターとともに「入所と在宅の壁を作らない」サービスを展開しております。
私共はこれを「バザール・ケア」と呼んでおりますが、施設自体が地域社会の縮図のようになっており、大規模多様な関係性の中で利用者の自己決定で一日を過ごすことにより “関係と生活” を見直すきっかけをつかめるよう支援するという「生活リハビリ」の場となっております。
もちろん、療法士からの個別訓練・評価などが受けられる事も重要な役割の一つとなりますが、個別訓練を受けることのみがリハビリであると思い込まれている家族・利用者も多いようです。また、私を始め通所リハビリを十分に理解できていないケアマネが、十分な説明による理解も得られないままに、家族からの要望だけで、安易に通所リハビリが導入されてしまうというケースも少なくないようです。このため、中心に考えなければならないはずの「利用者自身」がカヤの外になってしまい、目標も持てないままに利用開始となり不満を抱かれるという悪循環が起きています。
81歳女性の西さんもその一人です。西さんは脳出血後遺症による右片麻痺が残り要介護3の認定を受けました。退院後すぐに週3回の通リハ・1回のデイサービスを開始されています。サービスの効果があったようで、3ヵ月後の更新認定では要支援となられました。
通リハの担当療法士からは現在の機能を低下させないためには、通リハの利用を中断すべきではないとの意見がありました。しかし、デイサービス事業所との関係もあったため、家族より通リハの利用終了を希望されました。通リハの利用がなくなり半年が経過した次の更新時には歩行の持久性が低下し実用歩行でのレベル低下あり、要介護1の認定となりました。このため居宅を再契約されるとともに通リハを再開し、家人希望にて短期集中リハを利用されることとなりました。
西さんはもともと、障害を負われたことに気落ちされており、生活に対する意欲低下が見られていましたが、退院後、療法士からの訓練も継続して行なわれていたことに伴い、広いバザールの施設内を過ごすことでも適度な活動量が得られていたようです。また、顔なじみの利用者もおり、気の合う利用者と一緒に行う手芸活動などを通じて、心身ともに活発な日常生活を得る事ができていたようです。
しかし、認定更新による制度上の制限から、本人の意向が反映されないまま、デイサービスのみの利用となり活動量が減少したとともに、なじみの利用者・職員との関係も打ち切られてしまいました。
その結果半年後の更新認定では、心身機能の低下あり要介護1の認定を受けました。通リハを再開され、短期集中リハビリも利用されることとなりましたが、利用中断していた間の環境変化が「障害を負った自分」のイメージを更に悪化させていたようで、リハビリ中涙を流されることも見られるようになりました。
短期集中加算も「積極的なリハビリにより身体機能を向上させてほしい。」との家族・ケアマネなどからの要望であり、本人の意向は反映されていませんでした。
半年後の担当者会議では、「現在、持久力的にはやや改善しているが、依存的になられている。利用中は仲の良い利用者とコミュニケーションを楽しんだり、手芸活動も継続されているが抑うつ的な面も見られるため機能訓練は無理強いせず、本人の意向を尊重し、楽しみを増やせるよう支援する。」ということになり、短期集中リハビリも中止されました。
その後、西さんは環境を変えることなく週3回の通リハ・1回のデイサービスにて休むことなく順調に利用できており、まずまず満足の行く生活が送れているようです。
考察としまして、退院後の通リハ利用により一度は心身機能が向上しましたが、認定更新の際、西さんの意向が把握できておらず、家族の意向のみを尊重してしまい、西さんの意図しない環境変化を招いた結果、「障害を負った自分」のイメージを悪化させ生活の悪循環を招いてしまっていたようです。
今後このような失敗を防止し、通リハが生活に活かされるためには、検討段階でケアマネからも十分な説明にて理解が得られるよう知識を深めておく事も必要となりますが、まず、利用者とのコミュニケーションを図る中で、相互信頼関係を構築していくことが重要となります。
そこでケアマネが把握した「望む暮らし」を担当者会議などの場で専門的見地から意見を出し合うことによりニーズを導き出し、共通の目標に向かうための方法を明確にしていく。これを基に段階的な支援を繰り返すことによって一つ一つ達成感が得られ、目標である「望む生活」に向けてモチベーションを高めていくという「目標指向型」のプロセスを取り入れることで、訓練ばかりに囚われることなく、「何のために支援を受けるのか?」という目標を明確にできることを西さんのケースで気づかせてもらいました。
このプロセスの活用により、家族にも納得がいく説明の上で利用者の望む生活を支援していけるよう努力していきたいと思っております。
2009年8月1日土曜日
バザールケアで通所とショートを併用 全国老健大会2007年名古屋発表
『バザール・ケア』で通所とショートを併用! ~大規模・多様な関係性の中で得られた安心感!~
近藤明良
当施設は、岡山県の南西部、倉敷市真備町というところに位置し、施設周辺は自然に恵まれた環境であり、交通の便も良く誰からでも目に付く場所に立地しております。
私どもの施設では『バザール・ケア』という基本方針の下に運営が行われておりますが、まずは、施設のフロア構成・コンセプトから『バザール・ケア』について簡単に説明させていただきます。
当施設は2階3階が入所フロアで全室個室となっているのに対し、4階5階は入所通所共有のフロアとなっており、日中は主に4階で入混じって過ごし、お風呂も5階にて一緒に入浴されています。また、1階には事務所・居宅部門とともに、利用者はもちろん職員・外部の方も自由に利用できる喫茶店があり、入所・短期入所・通所といったサービスごとの壁をなくし、地域社会に開かれた大集団を作り出しています。
この『バザール・ケア』の長所を発揮するため、職員チームが個々の利用者に合わせて計画した関わりにより、通いなれた施設にいざという時には「お泊り」し最終的には長期入所になっても一度形成された施設や職員、他の利用者との「なじみの関係」は維持できる。という運営方法を展開しております。
では、この『バザール・ケア』がうまく生かされていると思われる“小田さん”のケースを紹介させていただきます。
小田さんは高齢者夫婦世帯の方です。難聴や視力障害などによりコミュニケーションに障害を来たし、次第に不活発な日常を送るようになりました。この不活発な状態が日常生活自体を不安なものとし、更なる心身機能の低下・行動障害をももたらしました。また、主介護者である妻も介護に自身をなくしかけている状態でありました。そんな小田さんに普通の生活を取り戻していただくため“通い”から「バザール」を利用していただくようになりました。
入浴好きであり、お風呂に入れるということでスムーズな導入が出来ましたが、週1回の通所では不安を取り除くにはいたらず、1年後にはさらに機能低下が進行していました。昼夜逆転傾向にあり、危険な足取りで夜間外へ出て大声で喋るなどの周辺症状も出現していました。このため、泊まりのサービスも導入しましたが、日中はなじみの4階フロアで落ち着いて過ごされるものの、夜になると不穏になり廊下へ出て夜通し大声で喋る。それにより他利用者が寝られない。という対応困難な状態が続きました。
そんなある日のショートステイでの事、この日は朝迎えが行くと、本人・奥さんともに入所日であることを理解されておらず「拒否された」と連絡を受けたためケアマネである私が訪問しました。
ちょうど長男夫婦が送り出しに来られており、説得したが応じないとの事で途中私も話に入らせてもらいました。すると、定期訪問や通所でも顔を合わせていたためか私を覚えてくれており、私の声が低く聞き取りやすかった事も幸いしてか徐々に誘いに乗ってこられ、参加となりました。
初日は入所後より顔を合わせてなかったためか、夕食後入所棟より「落ち着かないので来てほしい」と連絡があり面会に行くと食堂に「近藤さんと話がしたかった!」と待っておられました。
そんな小田さんの話に耳を傾けていたところ、同じような理由でショート利用中の尾崎さんが話しに入ってこられ3人での対話が始まりました。話しに筋はないものの私を介して、途中戦争の話題で盛り上がる事もありました。しばらく話すと、納得されたようで勧めたお茶を飲まれ自室誘導により素直に就寝、朝まで良眠されています。
翌日は朝より、「近藤さんは?」と探されていたようですが日中は挨拶程度を交わしておき、就寝前に再度面会しています。コーヒーを飲みながらゆっくり話を聞くことにより落ち着かれたようで、この日も機嫌よく就寝し朝まで良眠されています。
最終日は、家族の迎えにて帰れる事を伝えると、嬉しそうにされ「また来ます!」と機嫌良く帰られています。
この2泊3日がきっかけとなり、現在では継続する『バザール・ケア』の中で、小田さん自らが戦友などなじみの関係を見つけて生き生きと過ごされています。
【考察】
小田さんはコミュニケーションが障害された事により不安な日常生活を送り、周辺症状まで引き起こしました。しかし、症状だけを捉え認知症の方だけを集めた専門棟に隔離されるのではなく、(規範を示してくれる)しっかりした利用者・共感できる利用者・イザと言う時に頼れる仲間(職員など)の存在する「バザール」の中で一人の利用者として、日中はなじみの4階フロア、夜間も顔見知りの利用者・職員の中で過ごし、入所・通所・地域社会との切れ目ない関係性の中で、この2泊3日の初日、「尾崎さんと戦争の話で盛り上がった」ということを“きっかけ”に小田さんらしさが発揮できたとともに、落ち着いた生活をも取り戻すことが出来たと思われます。
このように、一人のお年寄りを職員側の都合で選別しない「利用者と職員の開かれた多様な関係性=「バザール」の中の一人として対応を個別化し、その人らしさが発揮できるよう『信頼できる代理人』となり“バザールを「カスタマイズ」”したことによって、不安を解消する事ができたと思われます。
【課題】
ケアマネも、『信頼できる代理人』となれるよう『対話』を積み重ねていく中での気づきを「バザール・ケア」の中でも共有することにより「その人らしさ」を発揮できる環境を得ていただき、『頼れる仲間』として長期安定的な関係を築き継続したいと思います。
近藤明良
当施設は、岡山県の南西部、倉敷市真備町というところに位置し、施設周辺は自然に恵まれた環境であり、交通の便も良く誰からでも目に付く場所に立地しております。
私どもの施設では『バザール・ケア』という基本方針の下に運営が行われておりますが、まずは、施設のフロア構成・コンセプトから『バザール・ケア』について簡単に説明させていただきます。
当施設は2階3階が入所フロアで全室個室となっているのに対し、4階5階は入所通所共有のフロアとなっており、日中は主に4階で入混じって過ごし、お風呂も5階にて一緒に入浴されています。また、1階には事務所・居宅部門とともに、利用者はもちろん職員・外部の方も自由に利用できる喫茶店があり、入所・短期入所・通所といったサービスごとの壁をなくし、地域社会に開かれた大集団を作り出しています。
この『バザール・ケア』の長所を発揮するため、職員チームが個々の利用者に合わせて計画した関わりにより、通いなれた施設にいざという時には「お泊り」し最終的には長期入所になっても一度形成された施設や職員、他の利用者との「なじみの関係」は維持できる。という運営方法を展開しております。
では、この『バザール・ケア』がうまく生かされていると思われる“小田さん”のケースを紹介させていただきます。
小田さんは高齢者夫婦世帯の方です。難聴や視力障害などによりコミュニケーションに障害を来たし、次第に不活発な日常を送るようになりました。この不活発な状態が日常生活自体を不安なものとし、更なる心身機能の低下・行動障害をももたらしました。また、主介護者である妻も介護に自身をなくしかけている状態でありました。そんな小田さんに普通の生活を取り戻していただくため“通い”から「バザール」を利用していただくようになりました。
入浴好きであり、お風呂に入れるということでスムーズな導入が出来ましたが、週1回の通所では不安を取り除くにはいたらず、1年後にはさらに機能低下が進行していました。昼夜逆転傾向にあり、危険な足取りで夜間外へ出て大声で喋るなどの周辺症状も出現していました。このため、泊まりのサービスも導入しましたが、日中はなじみの4階フロアで落ち着いて過ごされるものの、夜になると不穏になり廊下へ出て夜通し大声で喋る。それにより他利用者が寝られない。という対応困難な状態が続きました。
そんなある日のショートステイでの事、この日は朝迎えが行くと、本人・奥さんともに入所日であることを理解されておらず「拒否された」と連絡を受けたためケアマネである私が訪問しました。
ちょうど長男夫婦が送り出しに来られており、説得したが応じないとの事で途中私も話に入らせてもらいました。すると、定期訪問や通所でも顔を合わせていたためか私を覚えてくれており、私の声が低く聞き取りやすかった事も幸いしてか徐々に誘いに乗ってこられ、参加となりました。
初日は入所後より顔を合わせてなかったためか、夕食後入所棟より「落ち着かないので来てほしい」と連絡があり面会に行くと食堂に「近藤さんと話がしたかった!」と待っておられました。
そんな小田さんの話に耳を傾けていたところ、同じような理由でショート利用中の尾崎さんが話しに入ってこられ3人での対話が始まりました。話しに筋はないものの私を介して、途中戦争の話題で盛り上がる事もありました。しばらく話すと、納得されたようで勧めたお茶を飲まれ自室誘導により素直に就寝、朝まで良眠されています。
翌日は朝より、「近藤さんは?」と探されていたようですが日中は挨拶程度を交わしておき、就寝前に再度面会しています。コーヒーを飲みながらゆっくり話を聞くことにより落ち着かれたようで、この日も機嫌よく就寝し朝まで良眠されています。
最終日は、家族の迎えにて帰れる事を伝えると、嬉しそうにされ「また来ます!」と機嫌良く帰られています。
この2泊3日がきっかけとなり、現在では継続する『バザール・ケア』の中で、小田さん自らが戦友などなじみの関係を見つけて生き生きと過ごされています。
【考察】
小田さんはコミュニケーションが障害された事により不安な日常生活を送り、周辺症状まで引き起こしました。しかし、症状だけを捉え認知症の方だけを集めた専門棟に隔離されるのではなく、(規範を示してくれる)しっかりした利用者・共感できる利用者・イザと言う時に頼れる仲間(職員など)の存在する「バザール」の中で一人の利用者として、日中はなじみの4階フロア、夜間も顔見知りの利用者・職員の中で過ごし、入所・通所・地域社会との切れ目ない関係性の中で、この2泊3日の初日、「尾崎さんと戦争の話で盛り上がった」ということを“きっかけ”に小田さんらしさが発揮できたとともに、落ち着いた生活をも取り戻すことが出来たと思われます。
このように、一人のお年寄りを職員側の都合で選別しない「利用者と職員の開かれた多様な関係性=「バザール」の中の一人として対応を個別化し、その人らしさが発揮できるよう『信頼できる代理人』となり“バザールを「カスタマイズ」”したことによって、不安を解消する事ができたと思われます。
【課題】
ケアマネも、『信頼できる代理人』となれるよう『対話』を積み重ねていく中での気づきを「バザール・ケア」の中でも共有することにより「その人らしさ」を発揮できる環境を得ていただき、『頼れる仲間』として長期安定的な関係を築き継続したいと思います。
Lawton感情評価スケールの活用 全国老健大会2005年横浜での発表
大熊明美
【はじめに】老人保健施設ライフタウンまび(以下当施設)の通所リハビリテーション(以下通所リハビリ)では、開所当初より認知症高齢者も積極的に受け入れてきたが、最近その重度化が目立ってきている。
重度認知症高齢者のケアでは認知機能やADLといった身体機能の変化は少ないものの、笑顔が出てきた、表情が豊かになった、その場に馴染んで落ち着きが出てきた等、感情面に変化が確認される場合がある。
しかしながら、当施設の通所リハビリにおいて感情面のアセスメントは統一されておらず、利用者の変化や反応を職員間で共有し、それを通所リハビリ計画に反映できていないのが現状である。
この為、重度認知症高齢者の感情面のアセスメント手法として、身体的サインから感情を分類している LawtonのPhiladelphia Geriatric Center Affect Rating Scale(以下情動スケール)を参考に取り入れ、アセスメントについて再考した。
今回、重度認知症で意思疎通が難しい寝たきり状態の一症例に用い、若干の考察を得たので報告する。
【感情面のアセスメント】Lawtonの情動スケールは通常、評価者が20分間の面接で対象者を観察し、評価項目に示されている感情の持続時間を評価するスケールであり、主観的QOLの評価手法の一つとして用いられる。
しかし、今回は主観的QOLの評価をするのではなく、表出している「身体的サイン(=徴候)」とそのサインを「楽しみ 怒り 不安/恐れ 抑うつ/悲哀 関心 満足」の6項目の感情に分類している点に注目し、重度認知症高齢者の感情面のアセスメントとして参考にした。
感情面のアセスメントは評価できない場合を9で表示し、評価項目に示されている感情の持続時間を1(=なし)から5(=5分以上)までの6段階の数字で表した。
また、場面が感情を表出する要因として重要であると考えた為、アセスメント場面を記載した。
【事例紹介】男性 年齢83歳 老人性痴呆 脳梗塞
平成8年脳梗塞・左片麻痺の診断で入院後、ADL自立し独歩にて在宅復帰。
平成14年2月頃から記憶障害が出現。
平成15年11月妻の死後、認知症状が進行し寝たきり状態となる。
平成17年2月当施設通所リハ開始。要介護度5 四肢拘縮、頚部・体幹の運動制限あり。リクライニング車椅子を使用、ADLは全介助。会話不成立で意思疎通困難な場合が多い。何らかの刺激がなければ傾眠に陥り易い。ClinicalDementiaRating CDR=3
事例のアセスメントは個別機能訓練を実施している40分間を評価場面とし、身体的サイン(=徴候)とその持続時間を観察、身体的サインが表出した訓練内容・訓練実施者の働きかけや刺激を評価用紙に記述した。
【アセスメントの結果】
「快」の感情 楽しみ・関心・満足について
楽しみ=2:車椅子座位訓練時コーヒーカップをテーブルにセッティングするとコーヒーカップを注視後、右手を伸ばしカップを持とうとする。
関心=3:近くを通った職員を目で追う。レクリェーションの音楽や職員・利用者の声がする方に顔を向ける。
満足=3:半臥位でリラクセーション時、緊張なく穏やかで目を閉じる。
「不快」の感情 怒り・不安/恐れ・抑うつ/悲哀について
怒り=3:下肢関節可動域訓練時 顔をしかめる・眉をひそめる・訓練士を叩こうとする。
不安/恐れ=2:座位バランス訓練時 瞬きが増え手を握りしめる。
抑うつ/悲哀=3:訓練経過30分後 突然「かえろー、かえろー、(通所介護施設名)へかえろー」と嘆くような発言。
楽しみ 不安/恐れの2項目については表出した身体的サインの持続時間が15秒以下と短い。怒り 抑うつ/悲哀 関心 満足の4項目では前記2項目に比べ、身体的サインの持続時間が長く出現回数も多かった。
事例は自身の感情を伝え難く、他者からもその気持を推し量りにくいと思われたが、アセスメントからは、楽しみ 関心 満足といった「快」の感情と 怒り 不安/恐れ 抑うつ/悲哀といった「不快」の感情が確認できた。
【考察】
本事例は、コーヒーの入ったカップを見せると見つめた後手を延ばし持とうとする動作が見られ、コーヒーを飲むことが楽しみ「快」の感情を表し、また関節可動域訓練に対し顔をしかめ眉をひそめるといった表情で、怒り「不快」の感情を表していた。今回試用した感情面のアセスメントでは表出した感情がどの働きかけや刺激に基づいているかを記述した為、「快」「不快」の感情が何に起因するか具体的になり、職員間での情報の共有をより容易にし、通所リハビリ計画に反映する上で参考になると考える。また、このようなアセスメントに基づき、より多く「快」感情を引き出す場面をつくり、働きかけや刺激を増やす一方、「不快」感情の要因を減らすことで、重度認知症高齢者の主観的QOL向上への手がかりになるのではないかと考える。
【はじめに】老人保健施設ライフタウンまび(以下当施設)の通所リハビリテーション(以下通所リハビリ)では、開所当初より認知症高齢者も積極的に受け入れてきたが、最近その重度化が目立ってきている。
重度認知症高齢者のケアでは認知機能やADLといった身体機能の変化は少ないものの、笑顔が出てきた、表情が豊かになった、その場に馴染んで落ち着きが出てきた等、感情面に変化が確認される場合がある。
しかしながら、当施設の通所リハビリにおいて感情面のアセスメントは統一されておらず、利用者の変化や反応を職員間で共有し、それを通所リハビリ計画に反映できていないのが現状である。
この為、重度認知症高齢者の感情面のアセスメント手法として、身体的サインから感情を分類している LawtonのPhiladelphia Geriatric Center Affect Rating Scale(以下情動スケール)を参考に取り入れ、アセスメントについて再考した。
今回、重度認知症で意思疎通が難しい寝たきり状態の一症例に用い、若干の考察を得たので報告する。
【感情面のアセスメント】Lawtonの情動スケールは通常、評価者が20分間の面接で対象者を観察し、評価項目に示されている感情の持続時間を評価するスケールであり、主観的QOLの評価手法の一つとして用いられる。
しかし、今回は主観的QOLの評価をするのではなく、表出している「身体的サイン(=徴候)」とそのサインを「楽しみ 怒り 不安/恐れ 抑うつ/悲哀 関心 満足」の6項目の感情に分類している点に注目し、重度認知症高齢者の感情面のアセスメントとして参考にした。
感情面のアセスメントは評価できない場合を9で表示し、評価項目に示されている感情の持続時間を1(=なし)から5(=5分以上)までの6段階の数字で表した。
また、場面が感情を表出する要因として重要であると考えた為、アセスメント場面を記載した。
【事例紹介】男性 年齢83歳 老人性痴呆 脳梗塞
平成8年脳梗塞・左片麻痺の診断で入院後、ADL自立し独歩にて在宅復帰。
平成14年2月頃から記憶障害が出現。
平成15年11月妻の死後、認知症状が進行し寝たきり状態となる。
平成17年2月当施設通所リハ開始。要介護度5 四肢拘縮、頚部・体幹の運動制限あり。リクライニング車椅子を使用、ADLは全介助。会話不成立で意思疎通困難な場合が多い。何らかの刺激がなければ傾眠に陥り易い。ClinicalDementiaRating CDR=3
事例のアセスメントは個別機能訓練を実施している40分間を評価場面とし、身体的サイン(=徴候)とその持続時間を観察、身体的サインが表出した訓練内容・訓練実施者の働きかけや刺激を評価用紙に記述した。
【アセスメントの結果】
「快」の感情 楽しみ・関心・満足について
楽しみ=2:車椅子座位訓練時コーヒーカップをテーブルにセッティングするとコーヒーカップを注視後、右手を伸ばしカップを持とうとする。
関心=3:近くを通った職員を目で追う。レクリェーションの音楽や職員・利用者の声がする方に顔を向ける。
満足=3:半臥位でリラクセーション時、緊張なく穏やかで目を閉じる。
「不快」の感情 怒り・不安/恐れ・抑うつ/悲哀について
怒り=3:下肢関節可動域訓練時 顔をしかめる・眉をひそめる・訓練士を叩こうとする。
不安/恐れ=2:座位バランス訓練時 瞬きが増え手を握りしめる。
抑うつ/悲哀=3:訓練経過30分後 突然「かえろー、かえろー、(通所介護施設名)へかえろー」と嘆くような発言。
楽しみ 不安/恐れの2項目については表出した身体的サインの持続時間が15秒以下と短い。怒り 抑うつ/悲哀 関心 満足の4項目では前記2項目に比べ、身体的サインの持続時間が長く出現回数も多かった。
事例は自身の感情を伝え難く、他者からもその気持を推し量りにくいと思われたが、アセスメントからは、楽しみ 関心 満足といった「快」の感情と 怒り 不安/恐れ 抑うつ/悲哀といった「不快」の感情が確認できた。
【考察】
本事例は、コーヒーの入ったカップを見せると見つめた後手を延ばし持とうとする動作が見られ、コーヒーを飲むことが楽しみ「快」の感情を表し、また関節可動域訓練に対し顔をしかめ眉をひそめるといった表情で、怒り「不快」の感情を表していた。今回試用した感情面のアセスメントでは表出した感情がどの働きかけや刺激に基づいているかを記述した為、「快」「不快」の感情が何に起因するか具体的になり、職員間での情報の共有をより容易にし、通所リハビリ計画に反映する上で参考になると考える。また、このようなアセスメントに基づき、より多く「快」感情を引き出す場面をつくり、働きかけや刺激を増やす一方、「不快」感情の要因を減らすことで、重度認知症高齢者の主観的QOL向上への手がかりになるのではないかと考える。
ユニットケアよりバザールケア 全国老健大会2005年横浜での発表
■発表要旨 大熊正喜
私共は介護保険導入時の時点で、老健施設の中軸となるサービスは通所リハビリであり、365日年中無休で60名規模の通所サービスを実施し、それに付随して、56室・全室個室のショートステイ・ロングステイの療養棟を、いわゆる「生活の継続性」を重視しながら運営してきた。
入所よりも通所の定員が多いし、デイルーム・機能訓練・レクリエーションなどアクティビティの共有スペースを四階に集中させて、入浴のスペースを五階に集中し、入所・通所関係なく午前は女性・午後は男性の入浴を365日休まず実施している。
利用者にとっては通所・入所の壁を作らないこのような運営スタイルが、地域社会の縮図のような多様な利用者の、「バザール」のような賑わいを四階フロアーに生み出している。また、職員配置も入所・通所を部門として縦割りに分けるよりも効率的により厚く配置できている。
老健施設 ききょうの郷のデイケア主任は、このような運営を「雑踏ケア」と呼んでいるという。(高口光子「ユニットケアという幻想」)いわく、家に飽きているから、または家に飽きさせないために年寄りはデイに出てくる。だから、デイでは家庭的なものは一切排除する。「行き交う人が人知れず・・・」みたいなケア。自分が今ここにいるいないにかかわらず人がうごめいていて、好きなことをやっている。勿論、安全や居場所については職員がちゃんと確保する。グループホームやユニットケアをやっている施設はプライバシーを守ると称して閉鎖的なところが多いが、「雑踏」は開かれていて、利用者はもちろん見学者もボランティアも職員も入り混じっている。
私共は、これを「バザール」と呼びたい。「人々は市場=バザールに出かけて行き、いろんなものを見て回った。そこでの話に耳を傾けた。買物を楽しんだりもしたが、人々が市場に集まった最も大きな理由は、人との出会いのためであり、人との会話のためであった。」
ライフタウンまびは、井原鉄道の吉備真備駅前広場に面していて、ここでは、実際に年に何回か、地域の物産展などのイベント=バザールが開かれている。
ところで、ユニットケアは施設介護において画一的なケアを脱却し、利用者ひとりひとりの個性と生活のリズムを尊重した個別ケアを実現するための手法とされている。
しかし、個別ケアの実現は、決して利用者を小人数でグループ化し、生活空間を「ユニット」に細かく区切ることによって実現できるものではないと考える。
私共の、上記のような運営の中で、その一日を徹底して「その利用者」ひとりのために、その人の生きているうちにぜひやりたいこと・会いたい人・行きたいところなど、「望み」を実現するために計画的に動くことのできる、フリーの職員、通称「リベロ」を勤務表の上で組織的に作っていくことを、当面の目標としたい。
「小規模」だから、「小人数」だからいいケアができるという幻想は、皮肉なことにグループ-ホームの乱立とともに確実に終わりつつある。
登録:
投稿 (Atom)