2009年8月1日土曜日
ユニットケアよりバザールケア 全国老健大会2005年横浜での発表
■発表要旨 大熊正喜
私共は介護保険導入時の時点で、老健施設の中軸となるサービスは通所リハビリであり、365日年中無休で60名規模の通所サービスを実施し、それに付随して、56室・全室個室のショートステイ・ロングステイの療養棟を、いわゆる「生活の継続性」を重視しながら運営してきた。
入所よりも通所の定員が多いし、デイルーム・機能訓練・レクリエーションなどアクティビティの共有スペースを四階に集中させて、入浴のスペースを五階に集中し、入所・通所関係なく午前は女性・午後は男性の入浴を365日休まず実施している。
利用者にとっては通所・入所の壁を作らないこのような運営スタイルが、地域社会の縮図のような多様な利用者の、「バザール」のような賑わいを四階フロアーに生み出している。また、職員配置も入所・通所を部門として縦割りに分けるよりも効率的により厚く配置できている。
老健施設 ききょうの郷のデイケア主任は、このような運営を「雑踏ケア」と呼んでいるという。(高口光子「ユニットケアという幻想」)いわく、家に飽きているから、または家に飽きさせないために年寄りはデイに出てくる。だから、デイでは家庭的なものは一切排除する。「行き交う人が人知れず・・・」みたいなケア。自分が今ここにいるいないにかかわらず人がうごめいていて、好きなことをやっている。勿論、安全や居場所については職員がちゃんと確保する。グループホームやユニットケアをやっている施設はプライバシーを守ると称して閉鎖的なところが多いが、「雑踏」は開かれていて、利用者はもちろん見学者もボランティアも職員も入り混じっている。
私共は、これを「バザール」と呼びたい。「人々は市場=バザールに出かけて行き、いろんなものを見て回った。そこでの話に耳を傾けた。買物を楽しんだりもしたが、人々が市場に集まった最も大きな理由は、人との出会いのためであり、人との会話のためであった。」
ライフタウンまびは、井原鉄道の吉備真備駅前広場に面していて、ここでは、実際に年に何回か、地域の物産展などのイベント=バザールが開かれている。
ところで、ユニットケアは施設介護において画一的なケアを脱却し、利用者ひとりひとりの個性と生活のリズムを尊重した個別ケアを実現するための手法とされている。
しかし、個別ケアの実現は、決して利用者を小人数でグループ化し、生活空間を「ユニット」に細かく区切ることによって実現できるものではないと考える。
私共の、上記のような運営の中で、その一日を徹底して「その利用者」ひとりのために、その人の生きているうちにぜひやりたいこと・会いたい人・行きたいところなど、「望み」を実現するために計画的に動くことのできる、フリーの職員、通称「リベロ」を勤務表の上で組織的に作っていくことを、当面の目標としたい。
「小規模」だから、「小人数」だからいいケアができるという幻想は、皮肉なことにグループ-ホームの乱立とともに確実に終わりつつある。
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