認知症介護実践研修は、現場経験2年以上の中堅職員が受講する実践者研修、その修了後1年以上経過して受講できる、リーダー研修の二段階の研修が用意されており、認知症介護の奥の深さを学び、現場で専門性を磨いていく上でのキャリアプランとなっている。
私たちの施設でも、このステップを利用して、計画的に現場職員を研修に派遣している。さらに、私共の施設には、認知症介護研修・研究仙台センターで長期研修を受けた、「認知症介護指導者」が2名おり、岡山県の認知症介護実践研修の講師としても活躍している。
今回、2012/10/23に、岡山県社会福祉協議会の実施する平成24年度第四回の実践者研修で、2010年11月にこれを修了した江国徹が、先輩修了者として実践報告をしたので、収録する。
きらめきプラザ 301研修室 |
■ 私の学びと反省 江国徹 ■
私はパーソン・センタード・ケアの考えを自施設の事例検討で行っている「ひもときシート」に活かせないかと考え、自身の認知症ケアの新たな取り組みとして実施しました。
事例を通しての取り組みを紹介させて頂きます。
●事例概要
女性 70歳前半
要介護3 ADL=A1 認知症自立度=Ⅳ
病名=アルツハイマー型認知症 高血圧
●生活歴
長年勤めをしてきた。H10年代中頃から認知症症状出現。
その4年後 アルツハイマー型認知症の診断あり。他施設の通
所サービスを利用していましたが、徐々に利用回数減少。その
後、本人が通所サービスを拒否するようになり利用終了。
約2年後 ライフタウンまび 通所リハビリテーション利用開始と
なる。
●ひもときシート:提供者自身が感じている事例の課題
しかし、落ち着きつつあった頃から7ヶ月後 ゴミ箱のペーパータオルを拾う行為が出現。
ゴミ箱からペーパータオルを拾い出し、収集する事で手が不潔になってしまう。
その手で、あちらこちらと触る事で不衛生な環境になってしまう・・・と考えました。
その後、ゴミ箱からゴミを拾い出す行為は激しくなってきています。
他利用者から「また、取ってるよ・・・汚いなぁ・・・」と言われてしまい、特別視されてしまいます。
現在は、少し離れた所にビニール袋を設置しゴミを集めたり、ゴミ箱の位置を変更したりして対応してきましたが、他のゴミ箱からゴミを拾い出すようになりゴミ収集は続いています。
本人様に「どうするの?」と尋ねると「持って帰る」「いるの」などの返答がありました。
そうして、家族に、昔から生活してきた事・仕事の内容などから、収集する事について、原因になるような事はありましたか?と尋ねてみたところ、「物は大切にしてきた」など色々な情報が得られました。
家族から聞いた事==============================================================
●物を取り込むような原因になる様な事は思い浮かばない
●仕事は「倉庫整理や分別」「自動車関係の仕事(傷なおし)」
●物は大切にしていた。
●天気の良い日は機嫌が良い、悪い日は機嫌が悪い
●ミシンが上手
●仕事熱心
●皆から愛される人柄であった
昔の同僚から==================================================================
●精密な仕事内容であった。
周辺はゴミやホコリがないように綺麗にしておかなければならない仕事であったという事です。
周辺はゴミやホコリがないように綺麗にしておかなければならない仕事であったという事です。
物を習慣的に大切にしてきたので、もったいないと思っているのか、昔の仕事上、綺麗にしておかなければいけないと思っているのか、持って帰ってミシンで何か作ろうとしているのか・・・原因は私には分かりませんが、行動障害の原因は、生活史の中に行動障害への解決策があるように思います。
パーソン・センタード・ケアを知る以前の私は、ペーパータオルを拾う行為を、「不衛生になる」と考え、「汚いよ」「駄目よ」などと言い、ペーパータオルを取り上げていました。
そうして、取り上げられた事に不快感を示し、表情もこわばります。落ち着きがなくなり、そわそわし始め「ああ・・・しまったなぁ・・・どうすればいいんだろう・・・・」と悩んでいました。
そうして、その場しのぎで、なんとなくケアしていたと思います
。
「汚い」の声掛けからケアしたことに間違いがあり、「どうしたの?」「いるの?」などの声掛けから関わり、「行動障害」を引き起こす原因を引き出せるような声掛けやケアが必要であったと思います。
「ああ、また取ってる・・・」と見守るのではなく、「おはよう、今日の調子はどう?」と積極的に関わり「大切に思われている」と思って頂けるように接する事で、笑顔の数は増えてきたように思います。
その後、さらに情報収集した結果、人にあげる為に収集しているのではないか?という意見がありました。ペーパータオルを持っている時に、「それちょうだい」と話をすると、快く渡してくれる時もあります。
誰かに、あげるため・・・という理由の収集。心優しい利用者の行動に、私の「衛生的によくない・・・汚いから」という理由で問題行動と決め付けた、私の一方的で思いやりのない援助だったと思います。
パーソン・センタード・ケアを知り、自分自身のケアを見直すきっかけとなりました。
以前の私は、事例のような事があれば「汚いから駄目ですよ」の言葉が、いけない・・・と分かっていても言ってしまう自分であったと思います。
どのように声掛け・対応してよいか分からず、ペーパータオルを収集する行為に慣れてしまい見守るだけであったり、時に「汚いから」という理由で取り上げる事であったり、不適切なケアになっていました。
それはなぜ?と思うと、そこにはなぜ駄目なのか根拠がなかったからだと思います。
パーソン・センタード・ケアの理念を知り、本を読んだり、調べていくうちに、私は、表面的な事ばかり考えて、なぜ「行動障害」が起こるのか深く考えていなっかった事に気づきました。
パーソン・センタード・ケアを知った事で「大切に思われている」という事を感じて頂けるようなケアをしていきたいと思います。
※ 表面的とは? ⇒ インターネットより
「ケアの目標は、清潔や安全である事だけでしょうか?特に認知症がある場合は、一人ひとり異なる認知機能や健康状態 性格 人生歴 周囲の人間関係など、その人の個性をふまえ、また関わりを通して、その人が今どのような体験をし、どう感じているか、周囲の人が理解し、支えようとする事が大切」
私の学びは、
パーソン・センタード・ケアの考えを活かし【ひもときシート】を作成し、書面に起こす事で、援助者が課題に感じている事・多面的な事実確認や情報を多角的に捉えることができ、その場しのぎのケアから事実・根拠に基づいたケアへと考えられるようになった事。
そうして、その場しのぎのケアから事実・根拠に基づいたケアができるよう習慣的に考えられるようにならなければならないと感じた事です。
パーソン・センタード・ケアを知る以前の私は、ペーパータオルを拾う行為を、「不衛生になる」と考え、「汚いよ」「駄目よ」などと言い、ペーパータオルを取り上げていました。
そうして、取り上げられた事に不快感を示し、表情もこわばります。落ち着きがなくなり、そわそわし始め「ああ・・・しまったなぁ・・・どうすればいいんだろう・・・・」と悩んでいました。
そうして、その場しのぎで、なんとなくケアしていたと思います
「汚い」の声掛けからケアしたことに間違いがあり、「どうしたの?」「いるの?」などの声掛けから関わり、「行動障害」を引き起こす原因を引き出せるような声掛けやケアが必要であったと思います。
「ああ、また取ってる・・・」と見守るのではなく、「おはよう、今日の調子はどう?」と積極的に関わり「大切に思われている」と思って頂けるように接する事で、笑顔の数は増えてきたように思います。
その後、さらに情報収集した結果、人にあげる為に収集しているのではないか?という意見がありました。ペーパータオルを持っている時に、「それちょうだい」と話をすると、快く渡してくれる時もあります。
誰かに、あげるため・・・という理由の収集。心優しい利用者の行動に、私の「衛生的によくない・・・汚いから」という理由で問題行動と決め付けた、私の一方的で思いやりのない援助だったと思います。
■■ この江国報告についてのコメントを大熊正喜が翌朝の朝礼で行いました。 11分
【要約】
●「パーソンセンタードケア」というタイトルからさらに一歩踏み込むと
江国さんの一番良かったことは、BPSDの原因・背景を生活史に探るため
ご家族にインタビューしたこと。
BPSDを「上から目線」で抑制することが介護ではなく、生活史をひも解く中で
その人の行動の意味を想像し了解すること。
●介護現場では、業務優先の第一原理と個別ケア優先の第二原理の
健全な緊張関係が必要。
業務優先だけでは不適切ケアからBPSD増悪の悪循環が起きる。
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