2011年11月3日木曜日

認知症介護指導者養成研修の報告 大熊明美



ライフタウンまびの理学療法士・リハビリ主任の大熊明美が、認知症介護研究研修仙台センターで開催された平成23年度第一回認知症介護指導者養成研修を修了しました。これは、岡山県の老人保健施設協会の推薦で岡山県が公費で派遣したものです。前期仙台センター宿泊研修3週間、自施設に帰っての実習4週間、後期宿泊研修2週間という長い研修でした。
 この中で、自施設での実習を後期に仙台センターで発表したものを、職場に帰って報告したので、ここに掲載します。











■ アンケートの設計
( 男・女 /認知症介護の経験年数   年)

認知症高齢者に対する日々のケアについてお答えください。
当てはまるものに○をお付けください。

四択=========================
●そう思う → 4
●どちらかといえば、そう思う → 3
●どちらかといえば、そう思わない → 2
●思わない → 1
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■ 質問

1 いっしょの世界に住んでいる人として、当たり前の作法で話をし、行動することについて
2 (認知症の人の)周りで起きていることを伝えて、わかりやすく説明することについて
3 ケアは、一方的に提供されるものではなく「ともに行う」ものであるといった視点を持つことについて
4 自由な発想や想像力を使って、楽しむことについて
5 求めに応じて手を握る、足をさするといった行動が自然にできること
6 ちょっとした出来事を素直な気持ちで、いっしょになって心から喜びあう気持ちを持つこと
7 心身ともに安らかであること
8 共感を持って理解すること
9 自身の感情をコントロールし、いつも変わらない態度で受け止め、安心感を抱いてもらうこと
10 (認知症の人の)動作や表情の意味することをいっしょに探り、創り出していき、なにかができるようにサポートすること
11 (認知症の人が)創造的な活動ができるように促すこと
12 (認知症の人が)人のために何かをしてあげるようにできること
13 自ら得た情報、洞察、ヒントを参考にして、想像力と創造力を働かせて、自ら考えること
14 「その人なり」を知るための、情報収集をすること
15 想像力、創造力、洞察力を意識すること
 
■ 仙台センターでの発表抄録

「その人の能力にあったその人の望む生活」の視点
-アセスメントについて-

        報告者:大熊明美・所属:岡山県

●目的
アセスメントについての意見交換会とアセスメント表を作成する検討会を通じて、職員のアセスメントの視点を認知症高齢者の「できることやしたいこと」に向け、「その人の能力にあった、その人の望む生活」への視点が広げられるようにする。

●方法
ケアワーカーを対象にBS法を用いたアセスメントに関す意見交換会とアセスメント表を作成する検討会を実施し、アセスメントに対する意識の変化をアンケートにて確認した。
意識の変化を確認するための情報収集の手段として、「日々のケアにおける望まれる資質(心掛け)」についてのアンケート調査を行った。分析方法として、①現状把握として、1回目のアンケートからケアワーカーの日々のケアにおける心掛けに対する意識の確認を行った。また、②意見交換会と検討会の前後におけるアンケート結果を比較して、アセスメントに対しての意識の変化を確認した。アンケート内容は、パーソン・センタード・ケアの「認知症に携わる人に望まれる資質」を参考に15項目を作成し、最後に記述式を加え16項目とした(添付資料1)。意見交換会は、テーマを「アセスメントについて」のBS法とした。検討会では、アセスメントの視点を認知症高齢者の「できることやしたいこと」に向け、「その人の能力にあった、その人の望む生活」へ視点が広げられるような具体的な体験とするため、「(自分たちにとって)快適な暮らしに絶対必要なものについて」のBS法とした。

●結果
結果①の図1より、平均値が3.0以上の項目は、「尊重」「気持ちを汲む姿勢」「共に楽しむ」「心の距離と実際の距離「共に喜び合う」「心と身体のゆとり」「共感と理解」「サインの理解」「行動の支援」であった。「認知症に携わる人に望まれる資質(心掛け)」として15項目中9項目が「している、どちらかといえばしている」傾向にあった。平均値が2.9以下の項目は、「相互理解」「安心感」「活動の促し」「自ら考える姿勢」「情報収集」「想像と創造と洞察」であった。15項目中6項目については、「していない、どちらかといえばしていない」傾向にあり、その内の3項目「自ら考える姿勢」「情報収集」「想像と創造と洞察」はアセスメントに関する項目であった。
結果②の図2より、「アセスメント」についての検討会を実施する前の記述回答では、「していない」「不足している」等の指摘や「特にない」「今のままでよい」やといった意見があった。しかし、意見交換会と検討会を実施した後の記述回答では、「したい」「しようと思う」「していきたい」といった意見があった(添付資料2)。図3より、「していない、どちらかといえばしていない」傾向にあった「自ら考える姿勢」「情報収集」「想像と創造と洞察」のアセスメントに関する項目は、アセスメントについての意見交換会と検討会を通じて、3項目ともに平均値が上がった。

●考察
結果①の平均値が高かった9項目はケアの実践技術に関する資質として捉えることができる項目であった。これらの項目の平均値の高さは、実践技術に対する望まれる資質(心掛け)が高く、日々のケアにおいて「その人の能力にあった、その人の望む生活」の視点を持つ傾向にあると考えられる。しかし、「自ら考える姿勢」「情報収集」「想像と創造と洞察」といったアセスメントに関する項目は、日々のケアの中においては心掛けられておらず、十分な活用に至っていない傾向にあったと考えられる。
結果②からは、「アセスメント」に対して消極的で苦手意識があり、「アセスメント」の実施が義務的に行われていると考えられた。しかし、意見交換会と検討会を通じて、アセスメントの3項目について変化がみられたことは、「アセスメント」に対する自発的で前向きな姿勢と意欲的な取り組みを行おうとする意識の変化であると考えられる。また、BS法によって、既存のアセスメント表に望む生活の視点を持った項目が追記され、視点の広がりが確認できたと考えられる。(添付資料3)

●今後の計画
今後の課題として、自施設における「アセスメント」についての充実を図ることがあげられる。また、認知症高齢者の「その人の能力にあった、その人の望む生活」をするためには「アセスメント」だけではその解決に至らない。このため、「基礎知識」や「ケアの実践技術」の充実をも含めた取り組みを行い、認知症高齢者に対するケアの質の向上を目指す必要がある。

■動画  朝礼にて報告