2012年10月23日火曜日

認知症介護実践者研修を受講して 江国徹


 認知症介護実践研修は、現場経験2年以上の中堅職員が受講する実践者研修、その修了後1年以上経過して受講できる、リーダー研修の二段階の研修が用意されており、認知症介護の奥の深さを学び、現場で専門性を磨いていく上でのキャリアプランとなっている。
 
 私たちの施設でも、このステップを利用して、計画的に現場職員を研修に派遣している。さらに、私共の施設には、認知症介護研修・研究仙台センターで長期研修を受けた、「認知症介護指導者」が2名おり、岡山県の認知症介護実践研修の講師としても活躍している。

 今回、2012/10/23に、岡山県社会福祉協議会の実施する平成24年度第四回の実践者研修で、2010年11月にこれを修了した江国徹が、先輩修了者として実践報告をしたので、収録する。


きらめきプラザ 301研修室




■ 私の学びと反省  江国徹   ■

講義や演習の中から、私が1番印象に残っているのは、パーソン・センタード・ケアです。
受講前には、知らなかった認知症ケアの理念だったからです。
パーソン・センタード・ケアとは、認知症をもつ人を1人の「人」として尊重し、その人の視点や立場に立って理解し、ケアを行おうとする認知症ケアの考え方です。
周りの人から「大切にされている」という気持ちを持てるケア。それは、パーソンフッド(その人らしさ)を高める事を主眼とするケア。パーソン・センタード・ケアのパーソン(人)とは認知症の人だけではなく「ケアに関わる全ての人を指す」という事が印象深かったです。
「全ての人を指す」と言うのに、自分よがりになり、自分では気づかないまま「行動障害」を私の勝手な考えでケアしていて「その人らしさ」を見逃してしまっていた事に気づきました。
パーソン・センタード・ケアの理念を知らなかった頃の私は、人中心のケア・利用者本位のケアをと考えていても、忙しい言い訳に「業務優先」に近い考えであったと思います。しなければならない事ばかりの「先」を見て、認知症利用者の方の「その人らしさ」を見逃してしまっていた事に気づきました。今も、癖なのでしょうか、「先」を見てしまいます。「これでいいのか・・・?」と再度自分に問いかける事ができました。








 そうして、私が研修後に取り組んだ事は、パーソン・センタード・ケアの考えを活かしひもときシートを作成した事です。ひもときシートは、援助者の思い込みや試行錯誤で迷路に迷い込んでいる状態から脱するシートです。
ライフタウン まびの取り組みとして、年に1回、介護・看護・療法士・相談員などの職員がひもときシートを作成し、数名の症例発表をさせて頂いています。
 認知症専門ケア加算を算定するにあたり、算定条件で、介護・看護職員ごとの研修計画を作成し実施とあります。ライフタウンまびではひもときシートでの研修を実施しています。
 私は、受講前に1度、ひもときシートを使用し、認知症利用者様の考察を行いましたが、1度目は、パーソン・センタード・ケアの存在も知らずに考察を行ったものですから、よく分からず・・・なんとなく作成したと思います。
 去年は、受講後でもあり、パーソン・センタード・ケアの考えを参考に2度目のひもときシート作成をしました。パーソン・センタード・ケアを知った事で1回目よりは、「その人を知るように・・・」という視点で作成する事ができましが、まだ知識不足と感じて、今、書籍を読んで勉強中です。
本を読んだり、調べたりしていると、まだ「その人らしさ」を深く考えれていないと感じます。
来年は今より認知症利用者様の行動障害が理解ができるようになればいいなと思っています。


 私はパーソン・センタード・ケアの考えを自施設の事例検討で行っている「ひもときシート」に活かせないかと考え、自身の認知症ケアの新たな取り組みとして実施しました。
事例を通しての取り組みを紹介させて頂きます。

事例概要
 女性 70歳前半 
 要介護3 ADL=A1 認知症自立度=
 病名=アルツハイマー型認知症 高血圧
生活歴 
 長年勤めをしてきた。H10年代中頃から認知症症状出現。
 その4年後 アルツハイマー型認知症の診断あり。他施設の通
 所サービスを利用していましたが、徐々に利用回数減少。その
 後、本人が通所サービスを拒否するようになり利用終了。
 約2年後 ライフタウンまび 通所リハビリテーション利用開始と
 なる。
 












●ひもときシート:提供者自身が感じている事例の課題
しかし、落ち着きつつあった頃から7ヶ月後 ゴミ箱のペーパータオルを拾う行為が出現。
ゴミ箱からペーパータオルを拾い出し、収集する事で手が不潔になってしまう。
その手で、あちらこちらと触る事で不衛生な環境になってしまう・・・と考えました。





その後、ゴミ箱からゴミを拾い出す行為は激しくなってきています。
他利用者から「また、取ってるよ・・・汚いなぁ・・・」と言われてしまい、特別視されてしまいます。
現在は、少し離れた所にビニール袋を設置しゴミを集めたり、ゴミ箱の位置を変更したりして対応してきましたが、他のゴミ箱からゴミを拾い出すようになりゴミ収集は続いています。
本人様に「どうするの?」と尋ねると「持って帰る」「いるの」などの返答がありました。
そうして、家族に、昔から生活してきた事・仕事の内容などから、収集する事について、原因になるような事はありましたか?と尋ねてみたところ、「物は大切にしてきた」など色々な情報が得られました。

家族から聞いた事==============================================================
●物を取り込むような原因になる様な事は思い浮かばない
●仕事は「倉庫整理や分別」「自動車関係の仕事(傷なおし)」
●物は大切にしていた。
●天気の良い日は機嫌が良い、悪い日は機嫌が悪い
●ミシンが上手
●仕事熱心
●皆から愛される人柄であった

昔の同僚から==================================================================
●精密な仕事内容であった。

   周辺はゴミやホコリがないように綺麗にしておかなければならない仕事であった
という事です。
物を習慣的に大切にしてきたので、もったいないと思っているのか、昔の仕事上、綺麗にしておかなければいけないと思っているのか、持って帰ってミシンで何か作ろうとしているのか・・・原因は私には分かりませんが、行動障害の原因は、生活史の中に行動障害への解決策があるように思います。






 パーソン・センタード・ケアを知る以前の私は、ペーパータオルを拾う行為を、「不衛生になる」と考え、「汚いよ」「駄目よ」などと言い、ペーパータオルを取り上げていました。
そうして、取り上げられた事に不快感を示し、表情もこわばります。落ち着きがなくなり、そわそわし始め「ああ・・・しまったなぁ・・・どうすればいいんだろう・・・・」と悩んでいました。
そうして、その場しのぎで、なんとなくケアしていたと思います
「汚い」の声掛けからケアしたことに間違いがあり、「どうしたの?」「いるの?」などの声掛けから関わり、「行動障害」を引き起こす原因を引き出せるような声掛けやケアが必要であったと思います。
「ああ、また取ってる・・・」と見守るのではなく、「おはよう、今日の調子はどう?」と積極的に関わり「大切に思われている」と思って頂けるように接する事で、笑顔の数は増えてきたように思います。
その後、さらに情報収集した結果、人にあげる為に収集しているのではないか?という意見がありました。ペーパータオルを持っている時に、「それちょうだい」と話をすると、快く渡してくれる時もあります。
誰かに、あげるため・・・という理由の収集。心優しい利用者の行動に、私の「衛生的によくない・・・汚いから」という理由で問題行動と決め付けた、私の一方的で思いやりのない援助だったと思います。




 パーソン・センタード・ケアを知り、自分自身のケアを見直すきっかけとなりました。
以前の私は、事例のような事があれば「汚いから駄目ですよ」の言葉が、いけない・・・と分かっていても言ってしまう自分であったと思います。
どのように声掛け・対応してよいか分からず、ペーパータオルを収集する行為に慣れてしまい見守るだけであったり、時に「汚いから」という理由で取り上げる事であったり、不適切なケアになっていました。
それはなぜ?と思うと、そこにはなぜ駄目なのか根拠がなかったからだと思います。
パーソン・センタード・ケアの理念を知り、本を読んだり、調べていくうちに、私は、表面的な事ばかり考えて、なぜ「行動障害」が起こるのか深く考えていなっかった事に気づきました。
パーソン・センタード・ケアを知った事で「大切に思われている」という事を感じて頂けるようなケアをしていきたいと思います。
※ 表面的とは? ⇒ インターネットより
「ケアの目標は、清潔や安全である事だけでしょうか?特に認知症がある場合は、一人ひとり異なる認知機能や健康状態 性格 人生歴 周囲の人間関係など、その人の個性をふまえ、また関わりを通して、その人が今どのような体験をし、どう感じているか、周囲の人が理解し、支えようとする事が大切」





私の学びは、
パーソン・センタード・ケアの考えを活かしひもときシートを作成し、書面に起こす事で、援助者が課題に感じている事・多面的な事実確認や情報を多角的に捉えることができ、その場しのぎのケアから事実・根拠に基づいたケアへと考えられるようになった事。
そうして、その場しのぎのケアから事実・根拠に基づいたケアができるよう習慣的に考えられるようにならなければならないと感じた事です。




パーソン・センタード・ケアを知る以前の私は、ペーパータオルを拾う行為を、「不衛生になる」と考え、「汚いよ」「駄目よ」などと言い、ペーパータオルを取り上げていました。
そうして、取り上げられた事に不快感を示し、表情もこわばります。落ち着きがなくなり、そわそわし始め「ああ・・・しまったなぁ・・・どうすればいいんだろう・・・・」と悩んでいました。
そうして、その場しのぎで、なんとなくケアしていたと思います
「汚い」の声掛けからケアしたことに間違いがあり、「どうしたの?」「いるの?」などの声掛けから関わり、「行動障害」を引き起こす原因を引き出せるような声掛けやケアが必要であったと思います。
「ああ、また取ってる・・・」と見守るのではなく、「おはよう、今日の調子はどう?」と積極的に関わり「大切に思われている」と思って頂けるように接する事で、笑顔の数は増えてきたように思います。
その後、さらに情報収集した結果、人にあげる為に収集しているのではないか?という意見がありました。ペーパータオルを持っている時に、「それちょうだい」と話をすると、快く渡してくれる時もあります。
誰かに、あげるため・・・という理由の収集。心優しい利用者の行動に、私の「衛生的によくない・・・汚いから」という理由で問題行動と決め付けた、私の一方的で思いやりのない援助だったと思います。




■■  この江国報告についてのコメントを大熊正喜が翌朝の朝礼で行いました。 11分



【要約】


●「パーソンセンタードケア」というタイトルからさらに一歩踏み込むと
 江国さんの一番良かったことは、BPSDの原因・背景を生活史に探るため
 ご家族にインタビューしたこと。
 BPSDを「上から目線」で抑制することが介護ではなく、生活史をひも解く中で
 その人の行動の意味を想像し了解すること。

●介護現場では、業務優先の第一原理と個別ケア優先の第二原理の
 健全な緊張関係が必要。
 業務優先だけでは不適切ケアからBPSD増悪の悪循環が起きる。


2012年10月3日水曜日

現場での学び力を高める取り組み

ライフタウンまびでは、
介護現場で、働きながら、学び、専門職の資格を取り、さらに日々の業務の中でそれに磨きをかけていくことができる、そんな職場を目指しています。


 私たちの職場では、専門の養成機関を卒業して介護福祉士として新卒で入ってこられる方以外に、異業種・異分野から入られて、三年間の実務経験で、介護福祉士の資格を取ったものが多数働いています。
 常勤職員は、ほとんどが有資格者で、パートの方でも実務経験期間をクリヤーすれば、自発的に勉強して資格を取っています。


 以下の動画のように、様々な委員会や研修企画チームが、計画を立てて、レベルの高い職場研修を実施しています。




2012年10月2日火曜日

2012年度の転倒予防教室 報告


2012年度の真備高齢者支援センター主催の転倒予防教室に、大熊正喜か講師として参加しました。
今年度のコースの特色は
● 太極拳の入門実技を取り入れた
● 転びそうになったヒヤリハット体験を参加者に出し合っていただいた。
● 身体面・環境面の総合的な転倒リスクの自己チェックのチャートを作成した。
ということです。
大熊の朝礼での報告を動画で掲載するとともに、教室の様子を次に画像で載せます。




太極拳がなぜ転倒予防に有効かについて、解説したスライドを掲載します。
2002年に全米老年学会が世界中の転倒予防論文を総括した結果、世界中の転倒予防研究で一致して、最も効果があると認められたのは、太極拳だと言われています。






転倒予防で太極拳とともに大切なのは、普段使っていない筋肉を刺激して、「活動力」を上げることです。活動力とは、単に筋力のみではなく、遠くまで歩けるようになる、歩くのが速くなる、坂道が登れるようになるといった力です。
これには、パワーリハビリテーションの器械トレーニングとともに、ラジオ体操、フラメンコや日本舞踊、民謡などの踊り、様々な健康体操が効果があります。
この点については、秋の転倒予防教室で紹介していきます。

次回は、2012年10月16日 10:30~12:00  ライフタウンまび 大会議室にて
お申し込みは、
真備高齢者支援センター  栗尾さんまで   086-698-9000(代表)