2008年9月23日火曜日

岡山大学からの看護実習について  080806-08

ライフタウンまびでは、岡山大学医学部に保健学科が創設されて以来、10年近く、毎年、看護実習を受け入れている。カリキュラムは進化してきたが、基本は、初対面のひとりの高齢者の介護場面に参加しながら、その方とコミュニケーションをとり、3日間で信頼関係を徐々に作っていくという実習である。
看護学実習要項によれば、この「基礎看護学実習Ⅰ」の実習目的は
■実習で会った人々を解ろうとして人間関係を築き、
人間を尊重し、人間存在に働きかける看護とは、どのような看護か、
自分の心と他者の心に出会って看護するとはどのようなことかを
体験を通して学習する。
・・・・・となっている。

今年は、0806水曜~0808金曜の三日間。15名の学生が、担当教員の池田敏子先生と今年で二年目になるTAの清水由恵先生、おふたりに引率されて、毎朝、900頃着の井原鉄道でやってくる。井原鉄道の駅前にあるのも、岡山からの実習地としては恵まれている。
最初からもう10年近く来られている池田先生は、長く利用している利用者とも、主要な職員ともすっかりなじみになって、学生があまり脱線せず落ちこぼれずに実習目的を達成できるように、利用者や職員とうまく連携を取っておられる。職員も、外からの訪問者を敬遠せず、介助場面でも丁寧に指導助言できている。

この10年間で進化した面としては、施設管理者の大熊が、パワーポイントを使って、講義と演習を行っている内容が、少しずつ変わってきていることだろう。
1日目は、まず、オリエンテーションを兼ねて

●ナイチンゲール『看護覚え書』から介護の現場で学ぶこと

と題した講義を行う。

学生の感想==========================
まず、始めに大熊さんによるスライドを使ったナイチンゲールの換気について等のお話を受けました。看護学原論で習った看護覚え書を大熊さんの視点からみた解釈を学ぶことができ、とても勉強になりました。
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 講義の後、大熊が引率して施設の中を30分くらいかけて見学する。それから、ひとりこひとりの学生に、担当していただく入所者をお引き合わせする。利用者については、事前に担当職員が簡単な情報メモを作成してお渡ししてある。
15名の学生の人数分の利用者の選定は現場職員が行うが、スムーズに会話できるしっかりした利用者よりも多少コミュニケーションに障害のある利用者があえて選ばれている。
学生の感想==========================
ライフタウンまびに行き、まず感じたことはすごく施設が充実しているなと思ったことでした。私が前、行ったことのある老人ホームは暗くて不清潔な感じがしたけれど、まびは何より広くて、そして清潔な感じを受けました。お風呂もすごく広くて旅館の温泉のようで驚きました。窓もたくさんあり、田園風景が見えて落ちつける空間だなと思ったのが私の第一印象でした。
施設について、お風呂が自分のイメージしていたものと全く違っていました。初めて見学したとき温泉みたいできれいで開放的な空間が広がっていました。全て個室だという療養室は家庭の一室のような雰囲気で、一番私物を多く持っている方の部屋にお邪魔したときピアノが置いてあってびっくりしました。
もう1つ、施設に関して気づいたことが臭いです。私の家の近所に特別養護老人ホームがあるのですがそこは自動ドアを入った途端、独特の臭いがします。しかし、ライフタウンまびは外の空気と全く変わりませんでした。どの施設も本来、ライフタウンまびのようにあるべきだと感じました。
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 ナイチンゲールは150年前に「看護覚え書」のなかで次のように指摘している。「患者の排泄した汚物はすべて直ちに室外へ持ち出さなければならない。それは患者が出す発散物より以上に有害だからである。」私共は座位の取れる利用者は自室のトイレに移乗介助して座ってもらって、排泄した汚物はもちろんすぐに水洗便器なので洗い流している。また、たとえポータブルトイレに排泄したとしても、すぐに中のバケツを全室に完備しているトイレに流している。こうした、日ごろの排泄ケアの積み重ねが、10年経っても「臭くない清潔な施設」を作ってきたと言える。
ライフタウンまびの運営の特徴であるバザールケアについても、大熊が講義の中で触れ、実際に見ていただいた。
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ライフタウンまびの1番の特徴だと感じたところは“バザールケア”です。市場のように大きなにぎわった場所でそれぞれ入所者・通所者が関係をつくっていくというものでした。小規模ケアでは意外とデメリットが多いとわかり、バザールケアのように、高齢者が主体的に自分の関わり具合を選べるというのはすごく工夫されているなと感じました。
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 三日間、初めて訪れた施設でいろんな体験をしていただくのだが、紹介された利用者とかかわりを深める中で、食事・排泄・入浴の場面に立会い、介護現場でのコミュニケーションを体験していただく。
1日目、3日目の実習終了後には、大熊を交えたカンファレンスを行う。
2日目の午後は、大熊が90分程度の時間で、コミュニケーション演習を行う。
『チームで気づきを共有するスキルを身につける』 というタイトル。
演習は二つに分かれていて、
第一は、自分のとても好きなもの・好きなことを具体的にキーワードを散らすように書いて、それを二人で見せ合って質問しあう、偏愛マップコミュニケーション。
第二は、実習で受け持つた利用者のその人らしさ」への気づきをお互いに話して、それを相手がキーワードを抽出してマップを作る、ふたりマッピング。
■ 画像  コミュニケーション演習の様子


このようなコミュニケーションの技も手ほどきしながら、さまざまな介護場面で、利用者とのコミュニケーションを図っていく。

■食事場面で


■入浴場面で


■レク場面で


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今日は担当の方が入浴をされていたので出て来て服を着る所から手伝わせていただきました。この時、気が付いたのが、入所者の方それぞれのペースでの入浴が実施されている、ということです。以前私が他の施設で入浴介助をやらせていただいた時には、スタッフの方々での完璧な流れ作業になっていて、“時間がないから”と自分で着脱出来る出来ないに関わらず次々と風呂に入って出て、髪も乾かないまま廊下に出されて、そこでドライヤーをちょっとあてて終わりというものでした。だけどライフタウンまびでは「自分で着れる人には服を手渡す」というように出来ることは自分で行える支援の仕方で、車イスの自走可の人は自分で入浴にやって来て出ていく自然な流れでとても印象に残りました。“難しくてなかなか出来ない”と今まで聞いていたのですが、出来ているここの状況を見て、他の施設と何が違うのだろうかと考えさせられました。
職員の方とすれ違った時に職員の方がMさんに「元気があれば?」ときくと、Mさんが「何でもできる」と答えていて、それがすごくおもしろかったです。Mさんはテレビを見るのが好きなので、アントニオ猪木のことも知ってるんだなあと思って驚きました。
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また、希望される学生には、通所者を職員が家までお送りするときに、空いた席に同乗してその方の家まで一緒についていってもらう。
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通所の方を送るのについていただかせてもらったとき、全員を送った後、車のドライバーさんが話してくださったのは、ドライバーのほとんどが、今、ライフタウンまびに親族の誰かが入っている、(通ってきている・・・・大熊訂正)もしくは、自分の親が前お世話になった人だそうです。皆、感謝の気持ちからもちろん、給料はもらっていても、ボランティアのつもりで頑張ってられるそうです。そうやって、感謝され、支えて、支えられて成り立っていくんだと思いました。
3日間、受け持ちの方と過ごしてみて、車イス介助などの物理的なことも多く学べましたが、人間関係を築く基礎、コミュニケーションの大切さを1番学べました。また、徐々に人間関係が築かれる過程というものを実際に体験できた気がします。
私の受け持ちの方は初日から話しかければよく応えてくれていましたが、1日目はやはり誰とでもできるような、表面的な会話ばかりだったのが、2日目、3日目と過ごしていくにつれて、徐々にその方自身の食べ物の好き嫌いの話、ご家族の話、昔の病気の話、他の利用者の方や職員の方との関係を時に真剣に、時に笑いながらお話してくださって、終わって振り返ってみると「ああこれが関係を築くということなんだな」と深く感じ、学ぶことができました。

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看護学生との出会いは、利用者にとっても、職員にとっても、そこからさまざまな「学び」を得ることができる。自分たちが仕事として日々当たり前にしていることが、外から見てとても優れているとポジティブな評価をいただくということは、転倒や転落など事故が絶えずネガティブなレポートばかり書いたり読んだりしている私たちにとっては、大変な喜びであり、仕事への自信につながる。
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今まではコミュニケーションは、話をすることだと思っていたけれど、この実習でただ同じ空間にいて、同じ物を見て、して、同じことを感じることもコミュニケーションの一つなんだということに気づきました。この実習で何を学んだか上手く言葉にできないけれど、体で感じて体で学ぶことができました。
大熊さんに会えたことも自分の中で大きな変化となった気がします。コミュニケーションとは、看護とは、介護とは、幸せとは、ともう一度自分なりに考えてみようと思うきっかけになりました。今まで少し看護の道に進んで後悔したと思っていたけれど、この実習で看護の楽しさを感じれてやっぱり看護はすばらしいと思えるようになりました。

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ライフタウンまびでのたった三日間だけの体験実習だが、「身体で感じて身体で学ぶ」場を提供していること、そして、これから看護婦さんになる学生の方々に、その方にとっての「原体験」とも言うべき良い影響を与えることができているということは、施設にとっても、利用者にとっても、職員にとってもたいへんありがたく名誉な事だと考えている。

夏祭りの舞台で町づくり宣言をした別府清志さんのもとには、実習後に、受け持った学生からお手紙が届いた。
■画像  別府さんとオセロをする学生さん


■画像  学生さんからの手紙

1 件のコメント:

しみずよしえ さんのコメント...

このたびTAでライフタウンまびに学生さんたちと一緒に行かせて頂きました岡山大学大学院2年の清水です。
こんなふうにブログで紹介していただきありがとうございます。

私も学生さんたちと同様、この実習でいろいろなものを学ばせていただきました。

特にスタッフさんたちと利用者さんたちとの関わり方は私たち看護する者にとっても見習わなければならないと改めて思いました。

「思いやり」という言葉が施設中からあふれている、そんな場所だと思います。

学生さんたちがこの実習で学び得たことが今後活かされ、思いやりのある看護を提供できる看護師へと成長できることと思います。

そして何より、大熊さんの新しいことをどんどん取り入れていくその姿勢を私は見習って、向上心を忘れず頑張っていこうと思います。

本当にありがとうございました。